ライオンズクロニック

外野で垂れる能書き

しくじり先生 「安易に新しい変化球に手を出すな」

新しい変化球をマスターすると、投球の幅が広がって良い事ずくめ。


・・・なんて単純な話ではないですね。


新しい変化球をマスターするには、当然マスターする為の時間をキャンプは勿論、日々の練習の中でも割かなくてはいけません。


変化球をマスターするとは、基本的にはどんな状況でもストレートと同じ腕の振りから自在にコントロールできる状態にすることです。


それはワインドアップでもセットポジションでもクイックでも、前に既存のどんな球種を投げた後でも(前に投げた球種の感覚が指に残る中でも)投げられ、同時に新しい変化球を投げた後でもその後に既存のどんな球種でも投げられることを意味します。


練習は多岐に渡り、マスターするまでには相応の時間を要することでしょう。


練習時間も、肩や肘のスタミナも有限。


その限られた時間とスタミナの中から新しい変化球を習得する為の割合を多く割くと何が起こるか?


それは当然、今まで既存の球種を磨く為に割いていた割合が少なくなくなることです。



時間とスタミナの最大値を数値化して仮に100としましょう。

それをこれまで4つの球種の練習に均等に配分してきたとしたら、


100÷4=25


1球種あたり25


しかし新しい変化球をマスターする為に100のうち30を割いたとすると、既存の球種の練習に配分できるのは70。


これを4つの球種に均等配分すると、既存の球種には1球種あたりの持分は70÷4=17.5まで低下します。


25だったものが17.5になる・・・つまり練習量は30%も低下してしまうのです。



これまでそれなりに長い時間プロ野球を見てきた経験からは、新しい変化球に手を出してまず影響が出るのがストレート。


新しい変化球をマスターしたことでピッチングの幅が広がる筈が、ピッチングの軸となるストレートの質が下がってしまい、逆に大幅に狭まってしまう。


そんなシーンを沢山目にしてきました。


また、傾向として顕著なのはツーシーム、シュート系の球はよりストレートに影響を及ぼしやすいように感じます。


今シーズン、そのドツボにハマったのは他でもない十亀投手。


今シーズンは彼本来の威力のあるストレートが失われてしまいましたが、これは決して昨年の査定に不貞腐れて真面目に練習してこなかったからではなく、シュートに手を出した影響が大きいと思います。



今シーズンの大誤算は、、、まぁ色々ありますが、結構大きな割合を占めるのが十亀投手だと思います。


仮に十亀投手自身が貯金を作れなかったとしても、ここまでで80〜90イニングでも投げていてくれたらどんなに助かったことか。

(実際は昨日時点で41イニング)



出来ればストレートと、もともとの生命線であるシンカーを再度磨き直すべく2軍で時間をとって・・・って、今シーズンもう遅いのかな・・・



一方、野上投手が今シーズンから投げ始めた新球カットボールはそれ程他の球種への影響はないように見えます。


これは一昨年ツーシームに手を出したことで、ストレートがみんなシュート回転するようになった痛〜い反省から、既存球種であるスライダーの別バージョン的な感じで、なるべく他の球種に影響が出ない球種と練習方法から選んだからではないかなと想像します。


その辺りの経験から、自分と同じ失敗を他人が犯さないように野上投手がしくじり先生になって、十亀投手に教えてくれていたら・・・


なんてど素人の僕は考えてしまいますが、ピッチングは至って個人的なものですから、そんな伝授はないんでしょうね(笑)